在宅緩和医療の第一人者が考える「理想の最期」

患者にとっても良い 在宅の緩和ケアでの主体は訪問看護師

写真はイメージ(C)PIXTA

 在宅に移行する患者が増えるにつれ、家族の負担が大きいことも分かってきた。そこで1994年には、病院や医師会、社会福祉協議会、保健所、市役所などが連携し、地域で患者を支える仕組みづくりに取り掛かる。現在の地域包括ケアシステムに近い格好だ。

「外科医として、病院では手術や抗がん剤治療、放射線治療をする。一方で緩和ケア医として、訪問診療を続けていました。在宅は基本ひとりで診療していましたが、しばらくすると院長が訪問看護師をつけてくれることになりました。ここでまたひとつ、転換期が訪れたのです」

 訪問看護師の役割の大きさに気付いたのだ。

「訪問看護師には、私が培った症状緩和のノウハウを惜しみなく伝えました。すると日中は看護師だけで患者の対応ができるようになったのです。緩和ケアは看護師が主体となった方が患者にとっても良い。医師の役割は、その都度、患者や家族にしっかり病状を説明することだと知りました」

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蘆野吉和

蘆野吉和

1978年、東北大学医学部卒。80年代から在宅緩和医療に取り組む。十和田市立中央病院院長・事業管理者、青森県立中央病院医療管理監、社会医療法人北斗地域包括ケア推進センター長、鶴岡市立荘内病院参与などを歴任し現職。

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