在宅緩和医療の第一人者が考える「理想の最期」

患者にとっても良い 在宅の緩和ケアでの主体は訪問看護師

写真はイメージ(C)PIXTA

 病院ではやったことのない看取り方だ。職員は冷たい視線を浴びせたという。

「普通はしませんから、医療者としてストレスを感じていたと思います。ただ、思った以上に早く受け入れられていきましたね」

 在宅でも同様の看取り方をした。反応は良好だった。

「もともと在宅ホスピスはがん患者だけが対象でした。でも、自宅で最期を迎えたいという希望者が増えたので、新しい試みとして、非がん患者への緩和ケアの取り組みも始めることになりました」

 この頃、国も本格的に地域包括ケアシステムを推進し始めた。

「看取りを地域に戻す“基盤”は出来上がったので、私はバトンを渡すことにしました」

 十和田市におけるがん在宅死亡率は年間20%にまで増えていた。

 (取材・文=稲川美穂子)

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蘆野吉和

蘆野吉和

1978年、東北大学医学部卒。80年代から在宅緩和医療に取り組む。十和田市立中央病院院長・事業管理者、青森県立中央病院医療管理監、社会医療法人北斗地域包括ケア推進センター長、鶴岡市立荘内病院参与などを歴任し現職。

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