在宅緩和医療の第一人者が考える「理想の最期」

患者にとっても良い 在宅の緩和ケアでの主体は訪問看護師

写真はイメージ(C)PIXTA

 他の職種との協働で、患者により質の高いケアを提供できることが分かってきた。

「1996年には院内に訪問看護室を開設し、訪問診療の体制をさらに強化していきました。この頃には、半数のがん患者が在宅医療を希望するようになりました。その3分の1を自宅で看取(みと)るようになったのです」

 2005年には、在宅医療や緩和ケアの普及にあたるため、青森県の十和田市立中央病院に院長として着任した。

「古い体質の土地柄で、病院と医師会は商売敵のような関係でした。患者は病院で抱え込むため、地域で看取るという文化もほとんどありませんでした。そこで、まずは病院でも家族看取りができるようにしました。病院でも自宅でも、看取るのは家族です。家族に看取りの仕方を指導し、臨終の際は医師や看護師が同席せず、死亡確認まで少し時間を空けるようにしました。家族だけの時間を持てるようにしたのです。ご遺体も、医療者と家族が一緒にきれいにするようにしました」

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蘆野吉和

蘆野吉和

1978年、東北大学医学部卒。80年代から在宅緩和医療に取り組む。十和田市立中央病院院長・事業管理者、青森県立中央病院医療管理監、社会医療法人北斗地域包括ケア推進センター長、鶴岡市立荘内病院参与などを歴任し現職。

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