在宅緩和医療の第一人者が考える「理想の最期」

痛さやつらさを和らげ生きがいを奪わない在宅医療を選択したい

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 翌年、地域包括ケアに積極的に取り組む理事長に招かれ、帯広市の北斗病院に赴任する。ここでも地域で安心して看取りが行える“町づくり”に取り組んだ。

 在宅医療では、医師よりも訪問看護師の役割が大きい。主体的に緩和ケアを行える訪問看護ステーションの強化も、図らなければならなかった。蘆野さんは、看護師にとって経験がない処置を自ら実践し示すことで、古い常識に覆われた殻を壊し、持てる能力を十分に発揮できるよう、頭の中を解放していった。

「地域ではあまり使われたことのない量のモルヒネを使ったり、お腹にたまったゼリー状の特殊な腹水を在宅で抜いたりしたので、同行した訪問看護師や薬剤師には大変驚かれました」

 医療者からすると、在宅では厳しいと思われる症例も少なくなかったという。それでも蘆野さんは、患者が望めば在宅で支援した。看護師たちには、どんなケースでも在宅でやれるということを身をもって教えていったのだ。

2 / 3 ページ

蘆野吉和

蘆野吉和

1978年、東北大学医学部卒。80年代から在宅緩和医療に取り組む。十和田市立中央病院院長・事業管理者、青森県立中央病院医療管理監、社会医療法人北斗地域包括ケア推進センター長、鶴岡市立荘内病院参与などを歴任し現職。

関連記事