「成人の摂食障害で、親を治療の中心に据えるなど時代遅れも甚だしい、と批判を受けるのが現代医学の主流です。しかし、たとえ愛情からであっても親が無意識に繰り返し続ける不適切なコミュニケーションが、摂食障害回復を妨げていることは疑いようがありません」
■数年前は命の危機があった患者が「普通」の生活に
こんな経験はないだろうか? 夫(妻)に自分の気持ちを理解してもらいたいだけなのに、全く耳を傾けてくれないばかりか正論をとうとうと述べられる。次第に「何を言っても無駄だ」とむなしくなり、場合によっては激しい感情や衝動が込み上げてくる。
「摂食障害の親子でも、同様のすれ違いが繰り返されている。親が大好きで繊細な子供ほど、親の顔色ばかりうかがうような言動を取ります。やがて“いい子”でいることに行き詰まり、その破綻が摂食障害や親を困らせる問題行動に走らせる。親に傾聴・共感を徹底して求めるのは、“どうせ理解してもらえない”という子供の、親への不信感を和らげ、親への信頼感を取り戻すのが目的です」