上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

日本の医療文化は世界的にも正しいモデルのひとつといえる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■「医療安全」に対する考え方が成熟している

 残念ながら、それでもトラブルは起こってしまいますし、最悪の場合は訴訟に発展するケースもあります。それでも、日本の医療安全に関する“文化”はかなり成熟しているといえるでしょう。とりわけ、中国やベトナムといった医療途上国といえる国では、まだまだ「患者さんを守る」という意識が低く、医療安全の手続きも確立されていない状況です。

「すべての国民に一定水準以上の平等な治療が提供される」という日本の国民皆保険制度は、世界的にみても手厚く整備されています。医療安全も含め、日本の医療者は、自分たちは世界の手本になるような正しい医療モデルのひとつを実践しているという自覚を持って、さらにより良い医療文化を築いていく姿勢で取り組んでいくことが大切です。

 国民皆保険制度ではない米国では、患者さんが加入している民間保険によって、カバーしてもらえる医療の範囲が変わってきます。簡単にいえば、保険料が安いタイプでは治療費が高額になって受けられない医療がたくさんあるということです。そのため、医療者側は「この患者は医療費を払えるのか、払えないのか」という2つの視点で患者さんを判断します。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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