上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

医療者は軽症でも重症でも患者に「希望」を提供することが大切

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 分子標的薬のオプジーボが登場したように、近年はそれに近いことができるような新しい治療法がどんどん出てきています。たとえばインフルエンザを考えてみても、50年ほど前まではワクチンも急性期治療薬もなく、たくさんの人が亡くなっていましたが、いまは助かるようになりました。抗がん剤にしても、かつては定期的に投与しながら日常生活を送ることができるケースは少なかったのですが、いまは抗がん剤治療を受けながら、それまでと変わらないように仕事をしたり生活を送っている患者さんが当たり前になっています。

 長いスパンで見ると、それくらい医学は進歩しているのです。しかも、いまはテクノロジーが急速に進化しているので、これまで何十年もかけて実現させてきたことが、たった1日でできるようになる可能性もゼロではありません。医療者側は常にそうした最新の知識や展望を持ち、患者さんに提示できるようにしておかなければなりません。現状に絶望してしまう患者さんには、いかに希望や光を見せられるかが重要なのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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