診察の後、外来の看護師と薬剤師から、使われる抗がん剤や点滴を受ける時の注意などいろいろな説明を受け、Mさんはたくさんのパンフレットをもらって帰ることになりました。
病院の隣のそば屋で昼食を済ませ、車を運転して帰る途中、ふと母のことを思い出してお墓に寄ってみることにしました。天気が良く、3000メートル級の山々の中腹には雲がかかっていましたが、山頂はきれいに見えます。
墓地は、遠くの山脈が望める小高い丘にありました。50基ほど集まった墓石は、ご先祖さまが山々を眺めることができるようにと考えたのでしょうか、全基が山脈に向かって立っています。
「ご先祖さまは、毎日、山を眺めておられる」
Mさんはそう呟いて、道中にあるスーパーで買った黄色い菊の花を供えました。
お墓の隣に座り、ご先祖さま、亡くなった父母と一緒に山々を眺めているうちに、雲がライオンのように見えました。大きく口を開け、さらに胴体と尻尾もあります。
がんと向き合い生きていく