がんと向き合い生きていく

「髪の毛が抜けてしまうのは嫌!」叫んでみても気持ちは…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■雲がご先祖さまに

 ふと、宮沢賢治だったか、誰かが言ったことを思い出しました。

「人間も自然もこの世を形成している分子のひとつである。分子や原子というのは、お互いに結びついて事物を形成している。結局、この世に存在するものは、すべてがつながっている。死んだら自然に返る。灰になっても、それが土になり、そこからまた植物が生まれ、動物が育つ。われわれの体の細胞を作っているのと同じ元素や分子で、同じ物質で、自然は繰り返され、循環していく。人間も自然の一部に過ぎない」

 きっと、そうなのだ。そうなのだろう。でも我が家では、死んだら灰にして、お墓の中の骨壺に入れる。ご先祖さまもずっとお墓の骨壺の中にいる。骨壺は益子焼だ。昔、祖父の友人がこしらえた壺だ。土に返るのではない。だから、我が家の灰は植物や動物になる自然の循環にはなかなか入らない……。エジプトのピラミッドだってずっとミイラのままだ。でも、人間の起源は500万年前か……。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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