上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

新型コロナによる「受診控え」で命の危機を招けば本末転倒

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの感染がさらに拡大し、医療機関の受診を控える人が増えています。日本胸部外科学会の調査によると、医療機関の3分の2が、今年2月から8月までの間、手術件数が前年同時期に比べて「減った」と回答しています。とりわけ5月の手術件数は、平均40%も減っていました。

 感染拡大を阻止するため、医療機関側が時間的猶予がある患者さんの手術を延期した影響もありますが、感染を恐れて自主的に外出を制限している患者さんの「受診控え」も大きな要因のひとつといえるでしょう。

 患者さんのそんな心情はよくわかります。しかし、命の危険がある病気は新型コロナだけではありません。治療の遅れが深刻な事態を招くケースはたくさんあります。実際、しばらくガマンしていた腹痛が耐えられないほど酷くなって近所のクリニックを受診したところ、心筋梗塞がわかってすぐにカテーテル治療が行われ、どうにか一命をとりとめた患者さんもいます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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