Dr.中川 がんサバイバーの知恵

俳優の綿引勝彦さんが膵臓がんで他界…CTやMRIで早期発見を

写真はイメージ

 一般の方は「積極的な治療の打ち切り」に首をかしげるかもしれませんが、がんの末期に緩和ケアを上手に取り入れるのは悪いことではありません。樫山さんは「(夫と)慰め合いながら、特にこの1年は2人で寄り添えたのが幸せでした」と語っていますから。

 生存期間中央値が1・5年程度の難治がんにあり、夫婦が手を携えて3年の療養期間を過ごせたのはがん専門医としてよかったと思います。そのためには、自宅療養中も痛みを取ることが大切でしょう。

 上腹部や背中の痛みには医療用麻薬を基本に、神経ブロック注射が行われます。部位によっては放射線も効果的。局所の再発や隣接リンパ節への転移、肺転移が放射線の適応です。これらをうまく組み合わせ、浅香さんのケースのように痛みのない状態を目指します。

 しかし、読者の皆さんはできれば早期発見を。そう思うでしょう。ステージ0とステージ1での発見率は全体の2%に過ぎないものの、5年生存率はステージ0が86%、ステージ1が6割ほどと、ステージ2以上に比べてとても好成績ですからなおさらです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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