がんと向き合い生きていく

「なぜ看護師になったのか?」コロナ病棟に勤務してから頭をよぎる思い

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 それでも、いまは辞められません。看護師長は毎日のように苦労して欠員の補充を考え、勤務表とにらめっこしてやりくりしています。「疲れたから何日か休みたい」なんて、みんなに迷惑になるから絶対に言えないのです。

 今朝も疲れが取れないまま勤務に出てきました。それでも、重い感染防護服に着替えると、「しっかり働かなければ」という気持ちが湧いてきました。患者さんのそばに行って目と目が合った時、「この方は無事だった。生きていてくださった。データが少し良くなってきている。がんばらなきゃ」。そう思いました。

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 Aさんから聞いたこのお話を看護師長に話したところ、看護師長は「看護師の使命感です」と言われました。体を壊さないようにAさんに休みをあげてほしい……私は心の中で祈りました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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