Dr.中川 がんサバイバーの知恵

西郷輝彦が渡豪を発表 前立腺がん転移に有望な核医学治療

西郷輝彦(C)日刊ゲンダイ

 前立腺がんのマーカーのPSAが50%以上減少した人は50人中32人で、そのうち22人は80%以上低下。治療がうまくいった人では、中央値でおよそ7カ月、PSA値が増加しませんでした。末期がんの進行を抑えているのです。

 がんが進行した14人には、治療を追加。そうすると、9人はPSA値が50%以上減少。この人たちの生存期間は、33カ月でした。

 主な副作用は、悪心、疲労感、口渇で、10%に見られる重篤なものは貧血と血小板の減少です。治療効果の高さと副作用の少なさを考えると、きわめて有望な治療といえるでしょう。

 ところが、日本では放射性物質の取り扱いに法的な制限があり、この治療はできません。海外の承認から遅れて日本で承認されるドラッグラグの問題は解消されつつありますが、「核医学治療」は取り残されたまま。西郷さんの渡豪が、現状を打破するキッカケになることを願います。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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