がんと向き合い生きていく

医療連携手帳の活用でがんも他の病気もスムーズに治療できる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Kさんによると、乳がんの担当医には定期の診察の時に事後報告をしたそうです。担当医はふんふんと聞いているだけで、興味なさそうな印象だったといいます。

■それほど普及していないのが現状だが…

 以前、私たちは「医療連携手帳」というものを作りました。がん患者が、がんの手術など専門的な治療を行って退院した時、その病院の担当医師が30日以内に発行してくれるもので、がん治療の詳細、今後の治療計画を一冊の手帳にまとめたものです。がん患者が医療機関などを受診する際にこの手帳を持参し、専門病院の医師やかかりつけ医、その他の医療機関などがその都度、病状を書き込みます。連携手帳で患者の治療経過を共有できることによって、より適切な診療が可能となるのです。

 この連携手帳は5大がん(胃、大腸、肺、乳腺、肝)、前立腺がん、緩和ケアなどで作られ、「がん地域連携クリティカルパス」として診療報酬がつきました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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