■「間に合う」という事実は家族にとって大切
家族の中には、後々になっても「自分は親の死に目に会えなかった」と悔やまれる方もおられます。患者の最期を看取るために駆け付けた家族のひとりから、「今、息子がこちらに向かってもうすぐ着くのです。間に合うでしょうか?」と、たずねられたことは、何回も何回もありました。
ご臨終に間に合った、間に合わなかった。死に目に会えた、会えなかった。患者の意識がなくても、「間に合う」という事実は、家族にとってはとても大切なことなのです。
まして、がんではなくコロナに感染して、コロナ病棟で亡くなる方は患者本人も家族も悲惨です。C病院のコロナ病棟のスタッフは、「家族は濃厚接触者が多く、医師と看護師だけで見送ることが多いのです。数分だけでも最後のお別れをしてもらえたら良い方です。亡くなった方はビニールの袋に入れられて、人間扱いではないのです」と言われます。
がんと向き合い生きていく