人生に勝つ性教育講座

インテリのヘンリー8世を暴君にしたのは「梅毒」だった?

ヘンリー8世の甲冑(C)PIXTA

 ちなみに、ヨーロッパの女性は夜の正装として背中が大きく見えるイブニングドレス(オープンバックドレス)を身にまといます。実はこれ、梅毒の流行が生んだファッションだったともいわれています。「私は梅毒ではないわ。バラ疹もないわ。きれいな皮膚でしょ」というわけです。

 梅毒は、梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌が原因の性感染症で、感染すると全身に様々な症状を引き起こします。症状は4つに分かれていて、感染後、3週間~3カ月が第一期梅毒で性器や肛門などの感染部位に「初期硬結(しょきこうけつ)」と呼ばれる硬いしこりができます。その後このしこりの中央から崩れはじめ「硬性下疳(こうせいげかん)」と呼ばれる潰瘍が生じさらに(足の付け根)鼠経リンパ節の無痛性腫脹があらわれますが、発熱もなく4~6週間すると病変は消失してします。

 感染から3カ月以上経過するとこんどは発熱や倦怠感、頭痛などの症状があらわれます。これが第二期梅毒です。その代表的な症状が梅毒性バラ疹です。顔や手のひら、足の裏を含め全身の皮膚に淡く赤い発疹が多数できます。この梅毒性バラ疹があるかないかで、梅毒に感染しているか否かがわかるのです。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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