がんと向き合い生きていく

現場を見れば「困難な時代だからこそ五輪開催」とは言えなくなる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 しかし今、このコロナ禍の病床が逼迫している中での開催は、感染者を増やす危険が大きくとても心配です。外国からは選手らが約6万人、有明地区では、観客は半径1・5キロ範囲内に1日6万8000人、都内では22万5000人の観客が予想されています。さらに10都道県で19日間にわたって開催されるのです。

 新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、国会で「今の状況でやるのは普通はない」「開催すれば国内の感染、医療の状況に必ず影響を起こす」と話しました。ところが、橋本聖子組織委会長は「このような困難な時代だからこそ、私たちはオリンピック・パラリンピックを開催し、コロナによって分断された世界で人々のつながりや絆の再生に貢献し、スポーツの力で再び世界をひとつにすることが、今の社会に必要なオリンピック・パラリンピックの価値であると確信しております」と語っています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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