がんと向き合い生きていく

現場を見れば「困難な時代だからこそ五輪開催」とは言えなくなる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 もしこうした医療現場を見たら、会長は「このような困難な時代だからこそ開催」とは言えなくなると思います。

 招待した外国の選手がPCR陽性であれば国外退去と言いますが、もしも発病して、亡くなったらどうするのでしょう?尾身会長が「今の状況でやるのは普通はない」と言われたのは当然のことなのです。

 コロナ禍のため昨年は開催を1年待つことになりました。

 その1年間、国は何かオリンピックの準備をしていたのでしょうか? 感染対策を考えていたのでしょうか?

 1年延期をして、知らされたのはGoToトラベル、GoToイートでした。結果的には感染者、犠牲者が急増しました。この1年、多くの人がずっとガマンしたのは、なんだったのでしょう?

 ワクチンの効果は、7月のオリンピック開催には間に合いません。人命が一番大切です。人が動くとウイルスも一緒に移動します。世界中からたくさんの人が集まった結果、さらに感染力の強い東京型の変異ウイルスが発生し、犠牲者がさらに増えることがとても心配です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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