進化する糖尿病治療法

糖尿病予備群も危ない 心筋梗塞や脳卒中のリスクが2倍以上

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 5年間の追跡調査で明らかになったのは、HbA1cが正常な人では心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の発症リスクが11%だったのに対し、糖尿病予備群の人は18%と高かったということ。年齢、性別、BMI(肥満度を表す体格指数)、血圧、コレステロール、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、末梢動脈疾患といった心血管疾患のリスクを上げる他の要因を考慮しても、糖尿病予備群は心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高いことが分かりました。

 研究を行った医師は「糖尿病予備群の段階で、主要な心血管疾患の危険性がほぼ2倍に上昇。糖尿病に進行しなくても、心血管疾患の危険性を大幅に高める」と述べています。

 糖尿病予備群は「糖尿病になりかけているものの、まだ糖尿病ではない」とよく言われます。たしかにそうなのですが、米国の調査結果を見ると、「まだ糖尿病ではない」という、どちらかというと安心に傾く考え方は適切ではないでしょう。米国人と日本人では体質も食生活も異なるので、米国の調査結果をそっくり日本人に当てはめられないとはいえ、深刻に捉えるべきです。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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