人生に勝つ性教育講座

医師国家試験に初めて合格した女性医師は夫に淋病をうつされ決心

荻野吟子像(C)PIXTA

 それだけ梅毒患者が多かったことを考えれば、他の性感染症の患者も多かったはずです。当然、夫から性感染症をうつされた女性も少なくなかったでしょう。じつは1885年に日本で最初に医術開業試験(いまの医師国家試験)に合格した女性もそのひとりです。現在の埼玉県熊谷市出身の荻野吟子氏は、18歳で結婚しますが、3年後に離婚。その理由は淋病を夫からうつされたからだと言われています。当時の淋病は一生治らない病気とされ、子供が生まれないと言われました。高熱に耐え、腹痛に悩まされた末に離婚を決意したそうです。

 幸い、その後治療に成功したものの、診察台に乗って複数の屈強な男性医師に囲まれて行われる診察を経験し、「私のような女性を救ってやろうと決心した」と伝えられています。その時の恥辱が、女性が医師になるという夢すら抱けなかった時代の壁を破る原動力になったのだろうと思います。男性は、女性にそうした大きなエネルギーがあることを知っておくべきでしょう。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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