がんと向き合い生きていく

コロナ禍では検診の“先の検査”も大幅に減っている心配がある

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ある日、自営業のKさん(54歳・男性)は市の検診で「要精査」とされ、その用紙を持参して来院されました。Kさんのカルテファイルにはその用紙が挟んであり、それが2枚ありました。今年の日付のものには「胸部X線で異常影があり要精査」と、昨年の日付のものには「胸部要精査」と書き込まれていました。

 私はKさんを診察室に呼び、「去年は病院を受診されなかったのですか?」と尋ねました。するとKさんは、マスク越しに「ええ、すみません。仕事が忙しくて放っておいてしまいました」と申し訳なさそうに言われます。Kさんは気にされていたようで、保管していた昨年の用紙も持参したのでした。

 急いで採血と胸部X線検査を指示し、さらにCT室に電話をして緊急の胸部CT検査をお願いしました。KさんにはCT検査前の説明をして了解を得た後、「1時間後くらいに結果が出たら、またお呼びします」と伝え、検査に臨んでもらいました。

1 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事