がんと向き合い生きていく

コロナ禍では検診の“先の検査”も大幅に減っている心配がある

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 しばらくして、電子カルテでKさんの胸部X線写真を見ると、全体にはきれいな肺ではありません。胸部CT画像では、右肺上葉に径約1センチの丸い陰影が認められました。さらに採血結果では、肝機能はまずまず正常の上限、血糖値は120㎎/デシリットル、HbA1Cは6.2%と高値でしたが、糖尿病の緊急の治療は必要ないと判断しました。

 それからKさんを診察室に呼び入れ、CT検査結果の画像を示しながら説明しました。たばこは10年前まで20年間吸っていたようでした。お酒は毎日、缶チューハイを1缶。他に既往はありません。

■発見が遅れれば治療が大変になる

 さらに、事務業務を補助してくれている外来クラークさんに、「外来で診療している呼吸器内科のM医師に相談したいのだけれど、そちらまで行ってもいいか」と尋ねてもらいました。M医師には呼吸器疾患のことでは、いつも相談させてもらっています。するとM医師から「患者さんと患者さんの合間に時間をとる」との返事をいただき、私はKさんのカルテファイルを持って、M医師の診察室を訪ねました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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