Dr.中川 がんサバイバーの知恵

コロナワクチンに続き抗がん剤も不足 供給停止が相次ぐ理由

アブラキサンは点滴で(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 厄介なのが、すい臓がんです。すい臓がんの化学療法で一番に使われる薬の一つがアブラキサンで、その使用割合は4つのがんのうち65%と圧倒的。難治がんのすい臓がんで重要な薬を使えなくなるばかりか、すい臓がんではパクリタキセルが未承認とあって、事態は深刻です。

 日本臨床腫瘍学会など関連学会は合同でメッセージを発表。現在アブラキサンで治療中の患者については①効果があり継続中の人を最優先にする②胃がん、肺がん、乳がんではパクリタキセルに切り替えるなど代替治療を検討する、としています。新規治療については①代替治療が困難なすい臓がんやパクリタキセルへの切り替えが困難な人を優先する②胃がん、肺がん、乳がんでは、代替治療を検討する、ことになります。

 米国内で、薬の供給停止はありません。英国も供給が続いていて、ストップするのは日本と豪州です。その豪州は、今回の対応策として来年1月31日まで別の工場で製造された製品の輸入と販売を認める措置を取っているようです。日本も豪州の臨時措置を見習うべきでしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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