歩道橋から転がり落ちた日は、血液検査をするとコレステロール値が善玉も悪玉もゼロで、検査した人が「こんな血液は初めて見た」と言っていたのを覚えています。
肝臓の不調は自覚していたので、「ついに肝硬変になったかな」と思っていましたが、医師の診断はそれを通り越して「肝不全」と「腎不全」でした。
入院して治療を始めても良くならず、逆に腹水がたまりだしてお腹がパンパンに……。脇腹には赤紫色の血管模様が広がっていきました。
その後、意識が朦朧となり集中治療室に移されました。家族が「あと2日の命」と告げられたのはこの頃です。患者の間では、「あそこへ入ったらだいたい2~3日で亡くなる」と言われている部屋でした。でも、自分はそこで52~53日過ごして、一般病棟に帰ってきました。
集中治療室での前半はほぼ夢うつつです。劇場のようなところにいて、客席に人が大勢いるんです。毎日午後3時ごろになると聖水のようなものを渡される儀式があって、みんなが順番にもらっているのですが、なかなか自分の順番が回ってこない。なんで回ってこないのかな……なんて、そんな夢をずっと見ていました。
気づいたら体中にペタペタなにか貼られていて、心電図の規則的な音が聞こえていました。どんな治療をしたのかはあまり覚えていません。
独白 愉快な“病人”たち