上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

1週間の入院生活で感じた「感染対策」と「病院食」の重要性

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 よく「病院食はまずい」と言われます。順天堂医院では、病院食のメニューは栄養科の管理栄養士が考えていて、1食につき40種類以上のメニューが作られます。たとえば、糖尿病や高血圧がある患者さんに応じた制限食をはじめ、腎臓病食や肝臓病食といったように臓器ごとの食事管理が行われているのです。適切なカロリー、塩分やタンパク質の量などを計算し、それに応じた食材を選んでメニューが作られているため、普段の食事と比べるとどうしても淡泊な薄味になる傾向があり、患者さんは物足りなく感じるのでしょう。

 しかし、実際に病気をして病院食を食べたとき、驚くほどおいしく感じました。それを思うと、入院していて食事がまずいと訴える人は、実は入院が必要なほどの病状ではないのではないか、とも感じました。いずれにせよ、それくらい患者さんにとって食事は大切なものなのです。

 おかげさまで病気はすっかり良くなり、いまは普段通りに食事を取れていますし、排泄もスムーズです。入院して検査や治療を経験し、健康を取り戻せたことで、患者さんの健康被害に対する不安や治療への期待感、さらには医療スタッフの心優しさなどをあらためて感じることができました。感謝の気持ちでいっぱいです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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