がんと向き合い生きていく

パンデミック下のがん治療は自己判断で取りやめてはいけない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 がん患者といっても、がんの種類、進行度はさまざまです。現在の身体状況のことも含め、治療をどうするかは担当医との相談がとても大切です。がんを完治させるために手術が最適である場合は、極力予定通り手術が考慮されるべきと思います。しかし、病院の職員や患者に感染者が出た場合など、パンデミック時においては、手術の延期を考慮せざるを得ない場合も想定されます。

 また、市中の感染状況の変化によっては、治療方針を変えなければならないこともあり得ます。だからこそ、担当医と十分に相談することが大切で、自己判断で治療を回避してしまうことがないようにしたいものです。

■手術延期の場合は有効とされる治療への変更も考慮

 日本外科学会では、新型コロナウイルスのパンデミック下における外科手術トリアージの基本的な考え方として、「新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言(改訂版)」を出しています。その中で、ほとんどのがんは「数日から数カ月以内に手術しないと致命的となり得る、あるいは重大な障害を残す疾患」とされ、「十分な感染予防策を講じ、慎重に実施」としています。

2 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事