最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

母親を亡くした息子が怒りをあらわに…重要性を痛感したACP

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 息子さんはいつも笑顔で出迎えてくれ、私たちとの関係は良好と言えるものでした。お母さまは尿路感染症を繰り返し患い、息子さんからは毎日4~5回、LINEや電話で状態が伝えられるという状況が続いていきます。もちろんその都度お返事はするのですが、時に深夜や繁忙時には、申し訳ないなと感じながらも、長いご連絡に対してお返事が数行になることもしばしばありました。

 そしてそれから2カ月後の年の暮れ。徐々に食事が細くなり、お母さまは静かに旅立たれていかれました。

 残された息子さんもさぞかし私たちと思いを一つにして、全力投球でやり切ったものと思っていたのですが、突然、息子さんが私たちに怒りをぶつけてこられたのです。

「今まで我慢してきた。大丈夫、様子を見ようと言われるままにしてきた。どうせ死んでしまう患者は、一生懸命診ないと思っていたら、案の定メールの返信も短くなってきていたし。もうどうでもいいのか!」

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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