独白 愉快な“病人”たち

病名が重すぎて…看取り士会代表・柴田久美子さん語るがんとの闘い

柴田久美子さん(撮影)清水和土

 介護士として多くの人の死を見てきたけれど、だからといって決してがんは簡単に受け入れられるものではありません。世間では“2人に1人はがんになる時代”といわれますが、いざ自分がそうなってみると、まるで重たい石を強制的に持たされたような気持ちでした。

 まず、「家族に伝えられない」と思いました。当時は夫もいて、娘がいて、母や兄もいましたけれど、病名が重すぎて言い出せませんでした。

 でも、手術前日に主治医が病室まで来て、「明日の手術で声を失うかもしれません。でも命を救うためだから」と言われたとき、初めて「そんなに大変なことなんだ」と自覚したのです。それで、置いていってくれた睡眠導入剤を横目に「寝ている場合じゃない。みんなに“ありがとう”だけは言わなければ!」と、一晩中いろんな人に電話をしました。ただ、病気のことは伏せたので「こんな時間に何?」と怒られましたけどね(笑い)。周囲にがんだったことを伝えたのは、だいぶ後のことです。

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