先ほども触れましたが、心臓血管外科でのロボット手術は僧帽弁閉鎖不全症に対する胸腔鏡下弁形成術が行われています。ただ、手術以外に心筋保護や他の部位で不測の出血などを見逃さないようにするためには遠隔操作の良し悪しもあると思います。そうした点も踏まえ、この先、心臓血管外科領域のどんな場面でロボットが使われるようになる可能性があるかを考えてみると、決まった場所にアプローチするだけで済む内胸動脈の剥離や、冠動脈バイパス手術で使うバイパス用の血管を採取する場面くらいではないかと思われます。
また、1度目の手術で切開した部位がひどく癒着しておらず、とくに剥離する必要がない再手術であれば、登場する機会があるかもしれません。通常の手術の場合、胸の中央を胸骨正中切開してから、周囲を剥離して患部にアプローチします。しかし、患部に到達するまでに周囲を剥離する必要がなければ、ロボットアームで患部近くの任意の場所からアプローチが可能です。内視鏡カメラで見える範囲の処置で済む手術であれば、患者さんの負担を少なくすることができるのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」