認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

脳の健康寿命を延ばすには「変化」を見逃さないことが重要

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

■重要なのは、「変化」を見逃さないこと

 これを覆す研究結果が、近年発表されています。中でも注目を集めたのは、米国科学アカデミー紀要「PNAS」に10年ほど前に掲載された論文です。イタリアのパビア大学とトリノ大学のグループが行った研究内容になります。

 研究者たちは、マウスから神経細胞(ニューロン)を採取し、平均寿命が約2倍のラットの神経システムに移植しました。すると、その神経細胞はマウスの寿命を超え、新しい宿主で長命のラットの寿命が尽きるまで完璧に生きて活動していたのです。

 これは、人間においても同様の展開が考えられます。体の寿命は延びているわけですから、新たに適切な対応をとれば、脳細胞の寿命も延びる可能性があるのです。体の寿命の延びと脳の寿命の延びが同じラインに並ぶ時代が来るのも、夢ではないかもしれません。

3 / 4 ページ

新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

関連記事