認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

脳の健康寿命を延ばすには「変化」を見逃さないことが重要

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 さて、現段階でできる対策としては、3段階の予防(「発症させない」1次予防、「発症を遅らせる」2次予防、「進行を遅らせる」3次予防)のうち、2次予防と3次予防があります。特に重要なのが2次予防で、脳の変化に早めに気づくことです。

 認知症を治す薬はないものの、認知症で最も多くを占めるアルツハイマー病の進行は、年単位と非常にゆっくりです。しかも、認知症の前段階(軽度認知障害=MCI)でアルツハイマー病の認知症発症を遅らせる対策を講じれば、体の寿命が尽きるまで、脳の健康寿命を保てる可能性があるのです。

 では、認知症の前段階はどうやってチェックすればいいのか? 

 臓器なら、健康診断や人間ドックでの数値によって、一目瞭然ですよね。しかし脳の異常は、同じようにはチェックできません。加えて、認知症に関するのは脳全体のほんの一部分ですから、健康な脳の部分で衰えたところをカバーしてしまい、異常が目に見えてわかるようになるまで時間がかかります。

 大事なのは、「変化」を見逃さないこと。次回、どういう変化があるのかを紹介しましょう。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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