名医が答える病気と体の悩み

定年退職後に若年の60代で認知症になりやすいタイプは?

サラリーマン時代の生活が影響する(C)日刊ゲンダイ

 そして、現役時代のストレスも関係します。人間の脳は、ストレスがかかるとノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質が放出され、神経が興奮状態になります。退職時の役職が部長クラスという人は、社長や役員クラス、そして万年平社員と比べ、退職後の平均余命が短いといった話を聞いたことがあります。上司と部下の間で追い詰められストレスが多い立場の人は、神経に負荷がかかっており、これもまた認知症のリスクが上がる可能性があります。

 睡眠時間については、2021年の科学誌ネイチャー・コミュニケーションズの発表で、約8000人を50歳から約25年追跡調査したデータによると、睡眠時間6時間以下の場合、7時間に比べ、認知症のリスクが高いことが分かっています。また、短い睡眠持続時間が継続する状態は認知症リスクが3割増加しています。

 大企業でそれなりに出世するような真面目で周囲に気を使う人は、ストレスも多く、多忙を理由に食事や睡眠をないがしろにしやすいという意味で、同世代に比べて認知症が発症しやすいタイプであると言えるかもしれません。

▽飯塚浩(いいづか・ひろし) 1992年、鳥取大学医学精神神経医学教室、99年、鳥取大学医学部付属病院心理療法室室長などを経て、2001年からメディカルストレスケア飯塚クリニック院長を務める。

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