早期の認知症では、「変化」といっても、「ほんのちょっとした変化」です。家族であっても、よほど注意深くチェックしていないと、気づかないかもしれません。ましてや離れて暮らしていれば、「年のせい」と片付けられるレベルでしょう。
たいていの場合、早期の認知症を疑う変化に真っ先に気づくのは、自分自身です。しかし気づいたとしても、受け入れられない。都合の悪いことは否認しようとするのが、人間の正常心理だからです。
認知症を長年研究している私の立場からすれば、「ちょっとした変化」の段階で対策を講じてほしいと切に願います。認知症は、「自分自身が変化に気づいている」段階から数年を経て、「家族や職場の同僚など身近な人が変化に気づく」段階へ、そして「仕事や生活に支障が出てくる」段階と進んでいくわけですが、次の段階へと進んでいく期間を、エビデンスに基づいた認知症対策で延ばしていくことができるからです。
問題は、せっかく自身で「変化」を感じ受診しても、MRIやもの忘れの検査で異常がないので「大丈夫」と帰されてしまうケースが多いことでしょうか。この辺りの課題を次回は触れてみたいと思います。
認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う