老親・家族 在宅での看取り方

夫婦2人で旅行がしたい 死ぬ瞬間まで自宅で仕事をしていたい

写真はイメージ

 冒頭の言葉は、男性が奥さまに漏らしたもの。病院で過ごすより、作業場がある自宅で過ごした方が夫は幸せなのではないか。奥さまはそう思い、私たちのクリニックへ相談の連絡をくれたのでした。ただ一方で、医療への不信感も抱いておりました。入院中に投与された鎮静薬の副作用で、男性の体調がひどく悪く、ほぼ寝たきりのようになった経験があったからです。

「病気の治療のためとはいえ、鎮静薬でかえって悪化したように見えました。病院ではなく在宅で、緩和医療も適切に行ってもらえるのでしょうか?」

 私やスタッフは、今後の病状進行に伴い、どのような痛みが出てくるのか、その場合どのような対応が可能で、がんの種類によってどう違いがあるのかなど、過去の事例をひとつひとつ示しながら、男性と奥さまに説明をしました。納得してもらった上で、3カ月前から在宅医療スタートとなったのですが、その都度、不安や疑問が湧いてきます。私たちの仕事は、質問されるのを待っているだけではダメ。男性や奥さまの様子を見ながら、不安を覚えているであろうことをすくい上げ、それを解消するよう努めました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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