老親・家族 在宅での看取り方

前立腺がんの80代男性「自力でトイレに行きたい」と自宅療養を選択

写真はイメージ

 さまざまな人の手を借りながらも自宅でなんとか生活していた人が、骨折や病気で入院となり、わずか数週間後にはおむつ生活に……。こんな悲しい展開を、これまで数多く見聞きしてきました。

 ADL低下予防のために最近、在宅医療を選択した前立腺がんの男性(80歳)がいます。

 前立腺がんは男性ホルモンの分泌を抑えるホルモン療法が有効です。しかし、やがてはそれが効かなくなる。こうなった前立腺がんを「去勢抵抗性前立腺がん」といい、この男性もまさにそうでした。

 去勢抵抗性前立腺がんでは抗がん剤などの治療が行われます。しかしそれも効かなくなってきた。前立腺がんによる痛み、排便状態悪化があり、今後さらにひどくなる可能性を考えると、緩和医療のために入院も……という話も出てきたのですが、ご本人と娘さんは「(過去の入院経験から)ADLが低下するのは避けたい。自力でトイレに行きたい。在宅で」との希望でした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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