老親・家族 在宅での看取り方

前立腺がんの80代男性「自力でトイレに行きたい」と自宅療養を選択

写真はイメージ

 ある日の私たちのやりとりです。「浣腸したってしょうがないじゃん」という男性に対し、「浣腸が必要ないっていうのは喜ばしいことですけど、例えば熱が出たりしたらすぐ対処できますから」と私。すると男性は「じゃ、それ入れてもらおうよ」。娘さんが「こないだ、それは嫌だって言ったじゃない!」とツッコむと、男性は「あ、キャンセルしたんだった」。この男性は、すごく率直に意見を述べる方なんですね。トイレも、現在のところ伝え歩きをしながら、自分で済ませている。入院生活では「伝え歩き」は転倒の危険ありとみなされ、止められていたでしょう。他にもさまざまな制限がある。

 したいことができず、動きたいように動けない入院生活は、男性にとってはさぞかし窮屈なもの、ストレスフルなものになったと思います。ADL低下が進み、生きる意欲が下がり、意見をポンポン言う男性とは別人のようになっていたかもしれません。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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