いま、田んぼを相手に暮らしていますが、何かにつけ、亡くなった患者さんのことを思い出します。山道でお地蔵さんに会うと、しゃがんで手を合わせます。
特に思い出すのは、若い患者さんのことです。酸素吸入をしながら「死なないよね。私、死なないよね」……息苦しいのに、そう言いながら他の病院から運ばれてきた患者さん、何回も入院と退院を繰り返し、最後の入院ではじっと私を見つめていた患者さん、たくさんの患者さんが私の頭に浮かんできます。
「あの時、死なないよって、どうして言ってあげなかったのだろう」
「私をじっと見つめていたその目から、どうして先に私から外したのだろう」
医療としては、当然、やり尽くしていたのですが、やっぱり悔いが残るのです。残された家族から「よくやっていただきました。感謝いたしております」と、そう言われて、それで満足している自分がいたのではないかと思うのです。
がんと向き合い生きていく