■その人の「死」を考えることから逃げていた
人間、不治の病で亡くなるのだから仕方がないではないか。そう考えても、私はその人の死を深く考えることから逃げていたように思います。次の重症者の対応で考えている暇はなかった--実際にそうだったのですが、それを理由にして、その人の死を考えることから逃げていたと思います。
最近の報道では、コロナウイルス感染者が増え、WEB診療、発熱外来、防護服、訪問診療など、ヘルパーさんたちも大変そうです。いまや職員が足りなくて大変なのに、私は現場から逃げてしまいました。この大変な時期に逃げてしまって、残されたスタッフの方にはとても申し訳なく思っております。
でも、あの時、自分の心が追い込まれていて、人から離れて生きていくしかなかったのだと思っております。なんとバカなと言われそうですが、「人間って何なのだろう? 命とは何なのだろう? それを考えるのが人間の生きる究極の目的ではないのか?」──ずっとそんな自問自答をして、今でもぐちゃぐちゃ考える毎日です。
がんと向き合い生きていく