がんと向き合い生きていく

科学は生き方を教えてはくれないが、人生が変わった人をたくさん診てきた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 月1回のこの秘密の日を、ご近所は知りません。隣の家ではどう思われたのか。居るはずなのに玄関には鍵がかかり、返事がないわけです。

 こうして1年半後に、父は他の町に転勤となり、この儀式(?)は無事に終了しました。

■AIは利用の仕方が一番の問題

 話は変わりますが、最近のAI(人工知能)の発達はものすごく、いろいろな方面に応用されています。たとえば医療では、胃の内視鏡検査があります。たくさんの過去のデータを組み込むと、AIは「今、見ている箇所はがんが疑われます。生検してください」と、検査医にアドバイスすることも可能なようなのです。

 熟練した医師の目は、AIに置き換わるのでしょうか? 人間がAIから指示されるような時代になるのでしょうか? 会社は人事でAIを応用し、誰をどこに転勤させるか、どの部署に就かせるか、AIのアドバイスを利用するのだろうか……いろいろ考えてしまいます。人生には、何回か岐路があります。自分の人生は、たとえその時は失敗したとしても、「自分で決めたことだから」と諦めもつきます。もしかしたら、人生の生き方についてもAIがいろいろな選択肢を示し、「あなたの生き方はこうした方が良い」──そんなことを言うのでしょうか。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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