がんと向き合い生きていく

科学は生き方を教えてはくれないが、人生が変わった人をたくさん診てきた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ただ、AIは過去に人間の経験したものしか示せないのではないか、と思ったりもします。AIの利用の仕方が一番の問題かもしれません。

 ある時、進行したがんで不治と言われたものの、ちょうど新薬が間に合って治療を受け、治って、また生きられる。余命1年と言われた命が、医学の発達で1年過ぎて、また新たな希望を持って生きられます。科学は、直接は人間の生き方を教えてはくれませんが、新しい治療で人生が変わった方をたくさん診させていただきました。

 医学は科学です。AIも科学です。ただ、人生すべてが科学でないことはたしかです。八卦は過去のデータに基づいていたのかどうか分かりませんが、AIに支配されるような世の中は、神秘さがなくなり、つまらないように思います。

 余談ですが、Hさんは私の大学合格を父に予言していたそうです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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