老親・家族 在宅での看取り方

患者本人は在宅医療を拒否…家族の意向だけで始めたケースも

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 かつて航空会社でキャビンクルーをされていたというお母さま。結婚後の旦那さんによるDVが原因で離婚を経験され、3人の娘たちを引き取り、北関東で長らく住んでいたとのこと。

 やがて娘たちがそれぞれ独立。長らく一人暮らしをしていたのですが、数年前の台風で家が損壊。東京で三女の家族と同居生活を始めたものの、折り合いがうまくいかず、また一人暮らしに。私たちが訪問するようになった頃には、都内の北部の団地に住んでいました。

 しかし、もとから患っていた糖尿病、いくつもの体の不調に加え、認知症が進行し、ADL(日常生活動作)が進行。娘さんたちは、「一緒に住もうよ」と伝えているのですが、頑としてうなずかない。

 まだ完全に私たちを受け入れてくれるところまではいっていないのですが、訪問の繰り返しで、少しずつ心を開いてくれている手応えを感じています。現状では通院や入院より、在宅医療が向いていると判断し、まずは公的な立場で動ける味方、すなわち包括的な地域の連携を増やしていくことがなによりと考え、保健所への相談や、場合によっては病院などの他の医療の介入も想定したり、CM(ケアマネジャー)さんにも協力を仰いでいます。

 果たして在宅医療に何ができるのか。患者さんにとって何が正解なのか。その答えのない正解を暗中模索しながら、今日も患者さんのもとへ通うのです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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