高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリの影響も“食べる”力が低下する大きな原因になる

写真はイメージ

 健康寿命は「栄養」「運動」「社会参加」の3本の柱で成り立っているといわれています。しっかり食べて、しっかり動いて、しっかり家族以外の人ともコミュニケーションを取りましょう、と言い換えるとイメージしやすいでしょうか。実際、テレビなどで取り上げられる長寿の方は、例外なくこの3本の柱がしっかりしています。そういった方を見て、「○歳なのにしっかり食べて、しっかり畑仕事もしていて、すごく元気だ」という印象を持たれた人も少なくないでしょう。

 そういったことを踏まえて、健康寿命の柱としての「栄養」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。おそらくすべての人が胃ろうや点滴からの「栄養」ではなく、“食べる”ことによる「栄養」を思い浮かべるはずです。人生最期の瞬間までおいしいものを口から食べていたいというのは、多くの人の共通の希望だと思います。

“食べる”ためには、食べるための意欲(食欲)、食べ物を口に運び咀嚼する力(体力)、咀嚼した食べ物をのみ込む力(嚥下)が必要となります。これらの力は残念ながら加齢とともに低下していきますが、それは自然の摂理でもあり、ある程度は仕方ないことなのでしょう。加齢以外にも病気などさまざまな要因が“食べる”力が低下する原因になりますが、クスリの影響も十分、その原因になります。

 前置きが長くなってしまいましたが、これから何回か「クスリと“食べる”の関係」について紹介します。ただ、実際にクスリの話をする前に、次回は普段当たり前に行っている“食べる”という行動について、少し詳しくお話しします。

2 / 2 ページ

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

関連記事