認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

アルツハイマー病の薬「レカネマブ」は夢の新薬と言えるか?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

■やっと夜明けがはっきり見えてきた

 一方、安全性については、投与した患者の12%に副作用とみられる脳の浮腫がみられました。さらに脳の出血も17.3%にみられました。しかし、いずれも大部分は軽症で、発見4カ月後には消失。

 また、臨床試験期間の18カ月を過ぎて新薬の投与を続けていた1608人中2人が脳出血を起こして死亡。また、プラセボ群897人中1人も、脳出血で死亡しています。新薬投与で死亡した2人は合併症があり、抗凝固薬(血液サラサラ薬)を併用していたこともあって、治験安全評価委員会はレカネマブが原因ではないとしています。

 研究チームはアメリカで開かれている国際的なアルツハイマー会議でも今回の臨床試験の結果を報告。データの詳しい分析によって、レカネマブ群ではプラセボ群に対し認知機能の低下を7カ月半遅らせられ、別のシミュレーションでは、アルツハイマー病が軽度な状態で持続する期間が2年半から3年1カ月延びる可能性があるとのことです。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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