Dr.中川 がんサバイバーの知恵

坂本龍一さんは体力低下を告白 8割が苦しむ“がん悪液質”の2つのサイン

坂本龍一(C)共同通信社

 ジャーナリストの鳥越俊太郎さん(82)は、05年に見つかった大腸がんはステージ4で、左肺に転移がありました。その後、右肺と肝臓にも転移していますが、原発の大腸がんも転移がんもすべて切除できたため、18年たった今も活躍されています。

 では、坂本さんの状態の悪さの原因は何なのでしょう。皆さんも気になるところだと思います。NHKの番組の様子や報道されたことからの推測ですが、がんによる悪液質が影響しているのでしょう。

 がん悪液質とは、複合的な代謝異常による症候群を指します。がん細胞は筋肉や脂肪を分解し、大量のブドウ糖をエネルギーとして増殖。やせて筋肉が減少するのは、そのためです。

 がん悪液質になると、少し動いただけでも疲れやすく、疲れるから動かなくなります。そうすると、余計に体力も筋力も低下する悪循環に陥るのです。同時に生理活性物質の作用によって、食欲不振が強まります。それによっても、体重低下が悪化するのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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