がんと向き合い生きていく

空腹ホルモン「グレリン」はがん治療と大きく関係している

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 28歳で独身のDさん(男性・病院事務)はアパートで一人暮らしをしています。身長167センチ、体重98キロ、BMIは35(22を標準とし、25以上が肥満、18.5未満が低体重とされる)と、かなりの肥満です。

 健診で高血圧を指摘され、受診に来ました。その結果、血圧は150/90(㎜Hg)で、HbA1Cは6.8%と糖尿病を示唆する値です。また、肝機能の低下を示す値は軽度上昇しており、腹部エコー検査では脂肪肝との診断でした。

 診察後、まず痩せること、夕食後のスナック菓子をやめるように話し、栄養科で栄養指導を受けるように勧めました。家族歴では糖尿病はありません。本人は「はい、はい」と返事は良いのですが、守ってくれるかどうか……。

 夕方になって、管理栄養士が私のところにやって来ました。

「栄養指導の内容はDさんのカルテに書いておきました。中学生の時は柔道をしていたようですが、母親ががんで亡くなってから一人暮らしになって、友達もいないみたいなのよね」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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