Dr.中川 がんサバイバーの知恵

坂本龍一さんは体力低下を告白 8割が苦しむ“がん悪液質”の2つのサイン

坂本龍一(C)共同通信社

 健康な人でも体調を崩すと食欲がダウンしますが、がん悪液質による食欲不振は一過性ではなく、長期にわたるのが特徴。食欲低下と体重減少が見られたら、早期にがん悪液質を治療することが大切です。

 進行がんでは、4~8割にがん悪液質が認められ、死亡する1~2週間前では8割以上が体重減少になるといいます。ですから、がんと診断された後は、過去半年との比較で体重の5%以内の減少に食い止めるような食事療法を心掛けることがひとつ。もうひとつは、軽い有酸素運動や簡単な筋トレで筋肉をキープすることです。

 鳥越さんはがんになる前から運動に励み、いまも続けているように見えます。運動すると食欲がアップしますから、悪液質対策になります。転移などのがんをしっかり取り切ったことも大きいと思いますが、この生活習慣もとても大切です。

 いまでは、がん悪液質の薬剤もあります。薬物治療と並行して生活改善も重要なことが、今回の教訓といえるでしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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