第一人者が教える 認知症のすべて

定期的かつ長期的な運動は認知機能に良い影響をもたらす

早歩きなど、仲間と楽しくできるものを…(C)日刊ゲンダイ

 運動には、ウオーキングや水泳のような有酸素運動と、レジスタンス運動(筋トレなど)がありますが、認知症の予防には特に有酸素運動がいいとされています。有酸素運動でもたらされる脳血流量の増大や血管の新生が、認知症予防に働くと考えられているのです。

 高齢者を対象とした研究では、有酸素運動で記憶をつかさどる海馬の容積が増加することが報告されています。

 また、有酸素運動は最大酸素摂取量(VO2Max)を高める効果があり、この最大酸素摂取量が高い高齢者ほど、海馬の容積が大きく、空間認知機能がよいことも報告されています。最大酸素摂取量は、その人が一定時間に体内へ取り込むことができる酸素摂取量の最大値で、全身持久力の指標になっています。

 腕時計型のデバイスであるスマートウオッチには、最大酸素摂取量の測定機能が搭載されているものが多いですから、こういったものを使って、体を動かすことのモチベーションを上げるのもひとつの手です。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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