老親・家族 在宅での看取り方

86歳心房細動の男性「悪化リスクはあってもできる限り家にいたい」

ベストではなくベターを目指す(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 初めての在宅医療に戸惑いを隠さない娘さん。

「むくみが増しているということですね」(私)

「今朝ベッドから落ちて、立ち上がるのに3時間くらいかかって、足の太さが3倍くらいになっていますし」(娘)

「足がむくんじゃったのはさ、もっと入院中にリハビリやらせてくれなかったからだよ」(患者)

「もし今度、入院した場合もS先生が担当ですか?」(娘)

「もう入院したらしょうがないや」(患者)

「もっと悪くなるリスクはあります。でもできるだけ家にいたいわけですね」(私)

「そうですね」(患者)

「わかりました、では看護師さんも頻回に来てもらえるように指示を出しますし、もしも夜など苦しくなったら、当院に連絡をくだされば駆けつけます。その時点でお父さんは入院したくないとは言わないと思います。ただリスクはあります。搬送が間に合わないということもあるかも。ベストな選択ではないですが、お父さんのお気持ちを考えた上で、このやり方でやっていきましょう」(私)

 ご本人の希望によっては、ベストではなくベターを目指す。それも在宅医療ならではのやり方なのです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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