老親・家族 在宅での看取り方

病気による苦痛を和らげ人生の最期を穏やかに過ごしたい

在宅医療も「ホスピス」としての役割が

「出ていますか!?」(私)

「今日のは茶色かった」(患者)

「お尻からのはそうだけど、違うよ」(娘)

 十二指腸潰瘍出血の影響も見られるご様子。さらに痰も。

「痰みたいなのが上がってくるってことかと思うんですが、なんかぶどうみたいなのが」(娘)

「たぶん痰の方は肺がんもあるので、そちらの方からなのかなと思います。では止血剤をお出ししますか?」(私)

「出していただけるならお願いします」(娘)

「明日は輸血する方向で準備しますね」(私)

 今後の緊急時の対応については、大学病院でのフォローは継続しつつ、なにかあれば血液内科に相談できること、そして、もしも出血があれば消化器内科、肺であれば呼吸器内科などとの連携も従来通りあることを患者さんとご家族とにお伝えし、まずは安心していただきました。そうして在宅医療を開始してちょうど1週間後、静かに旅立たれていかれたのでした。

 入院中には眠剤の影響か、錯乱してベッド柵を乗り越え、夜中に外出しようとしていたというのがウソのように、自宅では最期まで穏やかに過ごされていました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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