医療未来学者が語る 5大国民病のこれから

がんの診断・治療はゲノム医療と新世代コンピューターが個別化治療を実現する

新たながん治療法が次々と実用化されるだろう

「しかも、従来のコンピューターとは比べものにならないほどの演算計算能力を持つ量子コンピューターなどの新世代コンピューターの開発が進んでおり、実用化すればより正確な個別治療が行われることになるでしょう。たとえば、がん治療薬の組み合わせは兆をはるかに超えるパターンがあることが知られています。同じがんでも、体重、身長、性別などが異なる患者一人一人に最適な治療をはじき出すことはできませんでした。しかし、新世代コンピューターに人工知能(AI)を搭載し、ビッグデータを解析させれば、それが可能になるのです。もちろん、新薬の開発も劇的に進むでしょう」

 現在、新世代コンピューターがはじき出した答えの中から正しい解を見つけ出すためのアルゴリズムは発見されていない。そのため、医療用AIががん治療専門医の能力をしのぎ、信頼を勝ち得るまでには時間がかかると思われるが、そうした時代が近づいているのは間違いない。

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奥真也

奥真也

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

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